第1章 甦る過去

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本当はその理由をわかっていた。 決して遠くはない。 けれど近いわけでもない。 今でもあの事を気にし続けて生きているんだ。 『お願いやから、ウチの傍におって?ずっとずっと、傍におってよ……なぁ、ウチは離れたくないねん!慶ちゃんとは』 振り切ったはずのあの別れから、もう3年以上が経つ。 なのに今になっても、彼女のあの言葉は僕の頭に鮮明に残っていて。 今でも忘れられずにいる。 今でも……耳に残っている。 「ほら、今も何か考えてたでしょ?」 優奈は僕に問いかける。 咄嗟に我に返って、何事もなかったかのように笑顔を作った。 「いや、教科書持ってきてたかなって考えてただけだよ」 消えそうにないあの言葉は時間が解決してくれそうにもない。 もしそうなのであれば、とっくに忘れているはずだ。 それだけ僕にとってはとても衝撃的だったんだ。 人に求められ。 人に……引き止められたことは。 「ホントかな?ま、いっか。早く教室に行こ」 優奈は僕の腕を引き、講義を受けるための教室へと向かう。 「あの人、超カッコ良くない?」 「隣の人は彼女かな?いいなー。あんなカッコイイ彼氏で」 「なんかさ、お似合いって感じの人だよね」 今日もそんな言葉が聞こえる。 傍から見れば、カップルだと思われても仕方なかった。 優奈は最近、やけに積極的だ。 「はい、最後列から二つ前の一番左端。慶一の指定席だよね?」 「別に指定席とかじゃないんだって。たまたまだよ」 たまたまなんかじゃない。 高校最後の年も、僕の席は最後列から二つ前の一番左端だった。 もしかすると、ずっと何かを意識してここに座ってきていたのかもしれない。
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