第1章 甦る過去

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あの日は……なんら変わりない、ただの平日の夜だった。 『ちょっと待っててな?別に大した物やないんやけど、ウチの手料理っちゅうもん見してあげるし』 『そんなん言うて、ホンマに美味いんか?いまいち信用ならんわ。なぁ、慶一もそう思うやろ?』 『へぇ、そんなこと言うんや。ほんなら、あんたにはなんもやらへんで?』 数年前、僕がまだ高校生だった頃。 今みたいに女の子に手料理を作ってもらったことがあった。 『相変わらず、きっつい性格してんなぁ?そんなんやし、良え男にモテへんねん』 『ウチは、そこらに居る変な男に興味なんかないわ。特にあんたなんか、願い下げやで』 そんな口喧嘩を毎日のように聞いていたような気がする。 いや、実際にそうだった。 飽きるほどに……この光景は見慣れていた。 『はいっ、慶ちゃん。遠慮せんと食べてや?ほんで、あんたにはこれ』 その日、目の前に出されたのは、良い感じに仕上がっている炒飯とサラダ。 どちらも僕らの好物だった。 『ちょっ、お前!いくらなんでもこれはやりすぎやろ?一口分くらいしかあらへんやんけ!俺は猫ちゃうねんぞ、猫でももっと食うわ』 『えぇ?ホンマ?悪いけど、ウチには慶ちゃんと同じ量にしか見えへんわー』 そんなやり取りを聞いていて、僕はいつも笑っていた。 二人は本当に僕を飽きさせなかったから。 いつもそばにいてくれて。 いつも…… そんな過去は、今でも忘れることはない。 いや、忘れられないからこそ、忘れてはいけないことなのだろう。 例えその思い出が僕を苦しめていたとしても。
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