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大通りを跨ぐ歩道橋から見える慌ただしい光景を眺めていた。
そこにはたくさんの車が行き交い。
人は流れるようにどこかへと向かう。
それはまるで、歯車の一部のように機械的な光景。
どれだけ長く眺めていても飽きない。
時折吹く風はどこか優しく、とても心地良い。
目の前に広がるこの光景はもう見飽きる程に見てきたものだ。
だが、ここを通るとつい足を止め、こんな風に見入ってしまう。
そして、俺にあの頃を鮮明に思い出させる。
「あれからもう3年か」
早かったような。
遅かったような。
特に何があったかなんて思い出せないが確かに、そして虚しく過ぎ去っていった3年間だった。
ここから見える景色も少しだけだが変わった。
新しいビルが建ち並び。
そこら中にあった店も随分と入れ替り。
初めてこの景色を見たときは、あんなにもワクワクしていたというのに。
今はただ。
苦しいだけだった。
「懐かしいなあ、ほんまに」
ここは慣れ親しんだ地元でもなければ、記憶のない頃から生まれ育った街でもない。
ここは、あいつが居た街。
あいつが皆を繋いだ街だ。
本当にいろんなことがあった。
俺にも……皆にも。
それは良い意味でもあり。
悪い意味でもあった。
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