最終章第1部 残された者

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「なんで」 思いは声になり。 「お前は」 悲しみは涙となって。 「せやけど……俺はまた何一つ守り抜くことはできひんかった」 虚しさは……怒りとなった。 やり場のない後悔だけが募りに募る。 流れゆく時の中で。 人は誰かと出逢い。 誰かと人生を共にする。 出会った人間が自分の人生に影響を与えることは紛れもない事実。 良くも悪くも、その人が自分を変えることとなる。 数え切れない人と出逢う人生の中で。 その中のたかがひとりなのかもしれない。 けれど、そのひとりに大きく影響を受ける結果となることもある。 俺の場合はそうだった。 「ひとつだけ……教えてくれへんか」 もし、全てをやり直すことができ。 全てをまた同じように体験することができたとしよう。 そうなったとき、人は都合の良いことを選択し、悪いことは避けるだろう。 それが当然であり、賢いことだと思う。 しかし俺は……また、同じで良いとさえ思える。 「お前はそれでよかったんか?」
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