第1章 甦る過去

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僕はふと、考えることがある。 何故この世界に生きているのだろうか……と。 生きている意味は在るのだろうかと。 僕が生まれたこと。 それが生命のメカニズムに過ぎないのなら、そこに意味があるとはとても思えない。 生まれ、育ち、パートナーを見つけ、子孫を残し、そして死ぬ。 そんな淡白な流れをただただ繰り返すだけの生。 仮にそうならば、人に感情というものは要らないのではないだろうか。 昆虫や他の動物のように、食うか食われるかの世界でいいような気さえする。 何故、人には感情があるのか。 その理由がわかる日は僕に訪れるのだろうか。 この際、贅沢は言わない。 理由がわからなくてもいい。 ただ、そこに何かしらの意味があればそれでいいんだ。 多くは望まない。 一つだけ。 何か一つだけでいい。 そうすれば、この世界の見え方も少しは変わると思うから。 東京に出てきて、早3年。 今ではこの街にも慣れてきた。 たくさんの人や車が行き交い、騒がしいこの街は眠ることを知らない。 流れ行く人波はなかなか途切れはしない。 午前0時を回り、確かに昼間と比べれば人は減った。 しかし、ここから見下ろす光景に人がひとりも見当たらないなんてことは絶対にない。 日本の核である東京は今夜もどこか妖しく、そして美しく輝いている。
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