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そう言って廊下の向こう側から、今時風のアクセサリーで髪をくくってお洒落をした、腰まで伸びた黒髪ロングの女子生徒がこちらへと向かって来た。
「はぁ……? 女子? 何だお前、彼女いたのか? はは……! こいつと付き合う女がどんな面してるのか見てやるよ」
どんな面かと言われれば、残念ながら見た瞬間とりあえず驚きはするだろう。
まるで生まれてから一度も汚い物に触れなかったかのようなきめ細やかな白い肌、ぱっちりとしていて、見つめられると視線を外したくなる程に綺麗で吸い込むかのような青い瞳。
筋の通った小柄な鼻に、品があり何もつけなくても綺麗な薄ピンク色の唇。
まるで神に愛されたかのような容姿の造形をした……アイドル顔負けの美少女だからだ。
「は……いやいやいや! はぁ!? マジかよ! やば……!」
「え!? あれがアテネと知り合いかよ……っていうかあれ、レイラじゃね!?」
「……いやマジだ! あれレイラじゃん! 何でこの学校にいるの!? っていうか何でアテネの知り合いなんだ!?」
そしてその顔を見て驚く要因の一つとして、この国でテレビが置いてある家に住んでいる人なら、目の前の美少女を大体知っているというところだ。
さっき、アイドル顔負けと言ったが……実際、マジでアイドルなのだ。それも毎日のゴールデンタイムでテレビをつければ必ず映る程の。
「え、ていうか仕事は? 普通ああいうアイドルって芸能学校に行くもんじゃねえのかよ」
「いや……あれだろ、レイラの母親ってこの学校の理事長って話だろ? だからじゃねえか?」
「マジかよ……あのやたら若い理事長の娘!? 俺全然知らなかった! マジかー……この学校来て良かったぁぁ」
入学式で挨拶をしていた理事長の娘、その話は事実だ。
理事長……ルク=ミフィール。
この世界を救った伝説の英雄の一人、ゼクセル=ミフィールの妻であって、今目の前にいるレイラ=ミフィールの母親。
つまり、伝説の英雄の娘で、この学校の理事長の娘で、アイドル。というぶっ飛んだ三つの属性を持った女の子がこの目の前の女子生徒になる訳だ。
「アッキー久しぶりだね! 元気だった? 私は元気にやってたよ~」
そしてそんなアイドルが、まるで当たり前かのように話かけてくる訳だ……いじめられっ子の僕に。
周囲の生徒からすれば、かなり凄い光景に見える事だろう。
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