78355人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、ユキちゃん!」
その時、レイラが嬉しそうにそう言い、手をぶんぶんとそのユキちゃんとやらに振りだした。
そういえばこの子……さっき廊下で僕とレイラがばったりと出くわす前に、レイラと喋ってた子だな。
つまりレイラの友達か。
「あ、そういえばユキちゃんにバイバイするの忘れてたよ~。どうしたのユキちゃん」
「御機嫌ようレイラさん。少しそこにいる冴えない見た目の男子生徒に用がありまして」
「アッキーに?」
ユキちゃんとやらはレイラにそう言った後、既に上履きを履き替えた僕の元へと歩き寄る。
「えっと……何か用ですか?」
「弁えなさい。それだけ言いに来たの」
「えっと……その……何を?」
僕がそう言うと、ユキちゃんとやらは眼鏡をくいっと上にあげ「白々しい」と言葉を放った。
「いいですこと? レイラさんはかの伝説の英雄、ゼクセルミフィール様のご息女であり、そのパートナであり同じく英雄でもあるルク=ミフィール様のご息女でもあるのよ?」
「う、うん。知ってるけど……それがどうかしたの?」
「それにレイラさんはそれだけじゃなく、その英雄のご息女という立場でありながらアイドルとしてこの国に活気をもたらす存在として活躍されているわ」
「えっと……その、それで?」
「ここまで言ってもわからないの? とんだ思考の持ち主のようね」
そう言われて僕は鼻で一回笑われる。
「いいです事? レイラさんは言わば上流階級の人間ですの。あなたのような下級の方がおいそれと話掛けて良い人ではないの。おわかりいただけるかしら」
「えっと……それはつまり、芸能人が一般の人と付き合ってたりしたらネタにされる恐れがあるとか……そういう話?」
「もっと深刻な問題ですわ。レイラさんは最早この国の象徴、只の一般人であるあなたが接すれば色々な問題が起きうるわ。私はあなたのためを思って言ってもいますのよ?」
この子、少し妄想壁でもあるんじゃないだろうか。
だったらこの学校に通うなよ、一般人が迷惑だろ。
それにどんな英雄であろうと、誰がどこで何をしてようが自由だろ……まあアイドルやってるからスクープにはなるのだろうけど。
最初のコメントを投稿しよう!