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結論から言うと、僕は入ったその部屋の中に閉じ込められてしまった。
ずっと使われていなかったせいか、そのドアを閉めた時の衝撃で鍵を自動でかけてしまったのだ。
電気も通っておらず、真っ暗で何も見えない暗闇の中……僕は二日間、その部屋の中で過ごした。
僕が閉じ込められた部屋は既に使われていない研究区画にあったらしく、電気も通っていなければ監視カメラも作動しておらず、僕を二日で見つけられたのは、むしろ早い方だったらしい。
でも……当時五歳の僕にとってはその二日間は地獄だった。
何も見えず、音も聞こえず、食べる事も飲む事も出来ず。
『助けて……誰か助けてぇぇぇ!』
叫んでも叫んでも、誰も来てはくれなかった。
まず僕を襲ったのが『飢え』だ。
飢えた事の無かった当時五歳の僕は、空腹による脱力感に恐怖した。
力が入らない……それだけでも真っ暗な空間においては充分な恐怖になりえたのだ。
ましてや……季節は夏、何もせず動かなくとも次々に体から汗として水分が失われていった。
そして次に僕を襲ったのが……『孤独』による恐怖だった。
真っ暗な空間で話相手のいない寂しさ、虚しさ。
光の射すことのなき完全なる闇の中で、僕の精神は徐々に……確実に蝕まれていった。
自分でも訳がわからなくなる程に泣き叫び、助けのまったく来ないという状況に少しずつストレスが蓄積されていく。
『……気がついたのね!』
目を覚ました時、僕は病院のベッドの上で横になっていた。
どうやらいつの間にか気を失っていたらしく、その間に救出されたらしい。
二日間あの部屋の中にいた事は後で聞かされた話だ。
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