第一章 ダブルフェイス

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 そうなれば僕のこれからの学校生活はお先真っ暗だ。  他から見れば打算的に見えるかもしれないが僕にとっては一大事な事だ。  ヒーローにもなれない、かっこいいスポーツマンにもなれない、冴えない男。そんな属性にさらに嫌われ者なんてついたら、僕は間違いなく引き籠る。 「はん……随分おとなしいじゃねえか? お前今さっき何やったんだ?」  故に僕に逃げるという選択肢はなくなり、大人しくぼこぼこにされるか、勇敢に立ち向かうかの二択しかなくなった訳だが……。  大人しくぼこぼこになんかされる訳がない。  面子は保てるだろうが、クラスメイトの三人も、ユキちゃんも僕も酷い目にあわされて終わりの最悪な結末だ。 「…………教えて欲しいのかい?」 「ああ? 何だお前? 随分余裕だな」  かといって僕が戦っても良いのか? と言われれば駄目だ。多分だけどうっかりレベルで死者がでてしまう。  となれば僕に残された手段は何なのか? となればもうそれは決まっている。 「どうやったかなんて教える訳ないだろ? ただ僕は……いつでも今見せた力を出す事が出来る……」 「は? じゃあ今すぐ見せてみろよ」 「見せてもいいけど……その場合さ、君達……巻き込まれて死ぬ覚悟は出来てるんだよね?」 「……んだと?」  はったりだ。  そう、さっき放った魔力の塊をネタに、こいつらにはったりをかますしかない。  いや実際放てるのではったりではない訳だが、それでも手を引かせるにはこの手段しかない。  かつて、僕の父さんは国のかなりお偉いさんと50人くらいの相手に他国の超お偉いさんを演じ、騙しきったという伝説がある……らしい。  僕は父さんの息子だ。血を受け継いでいる僕に出来ない訳がない!  父さん……今だけでいい。僕に演技力を分けてくれ! 「更に……さっきの力だけじゃない。僕は後三十回の変身を残している……この意味がわかるな?」 「お前…………頭大丈夫か?」  失敗した。
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