第一章 ダブルフェイス

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「お? 効いたみたいじゃねえか、どうよ俺の右ストレートは? 結構重いだろ?」  ……まずい、さっきまで少し余裕をこいていたが、今ので一気に現実に引き戻された。  このタトゥーギャングのリーダー……普通に強い。  くそ……こうなったらやけだ、魔力の塊を一か八かでぶつけてやる。  これくらいの力があるんだ……死にはしないはずだ。  瀕死にはなるのだろうけど……それでクラスメイトとユキちゃんも助かるなら、そっちの方がいいに決まっている。  悪いのは向こうだ、躊躇う必要はない。  これは正当防衛だ。  僕は何も悪くない。  僕は正しい。間違ってなんかいない。  ヒーローとしては無様かもしれないけど、こうなった以上……これ以外の最善はない。  僕は自分に何度もそう言い聞かせながら、目の前のタトゥーギャングのリーダーに向かって……魔力の塊を放った。 「う……う、うわぁぁああああ!? な、何だよ今の!?」 「おいおい……嘘だろ!?」  覚悟を決めると同時に、僕の手の平から巨大なレーザーのような魔力の塊が斜めに向かって空へと放たれ……タトゥーギャングのリーダーの上半身は、その極太のレーザーに包まれた。 極太のレーザーは、タトゥーギャングのリーダーの上半身を飲み込んだ後、そのまま廃棄ビルの壁を貫通し空へと消え去る。  自分で言うのもなんだが……凄まじい威力だ。  ……やってしまった。  そう激しい後悔の念を感じたその瞬間、 『……よかったのか?』   僕の頭の中で、聞こえてはいけない何かが聞こえた。 「っくそ……黙れ…………!」  だが僕はそれを、咄嗟に顔を振り、何も聞こえなかったと頭の中で繰り返し呟く事で誤魔化す。  大丈夫だ……僕の判断は間違っていない、大丈夫。  タトゥーギャングのリーダーは……大丈夫だ、生きている。  ぴくぴくしていて、上半身の服も全部なくなっていて、焦げたように肌が焼けているけど……ちゃんと生きている。 「……良かった」  自分でやった事とはいえ、ちゃんと生存を確認出来た事に、僕はほっと胸をなでおろす。 「何が良かったんだ? なあ? なあなあなあなあ!」  だがその直後、僕の背後で、今倒したはずのタトゥーギャングのリーダーの声が……はっきりと聞こえた。
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