78354人が本棚に入れています
本棚に追加
「お? 効いたみたいじゃねえか、どうよ俺の右ストレートは? 結構重いだろ?」
……まずい、さっきまで少し余裕をこいていたが、今ので一気に現実に引き戻された。
このタトゥーギャングのリーダー……普通に強い。
くそ……こうなったらやけだ、魔力の塊を一か八かでぶつけてやる。
これくらいの力があるんだ……死にはしないはずだ。
瀕死にはなるのだろうけど……それでクラスメイトとユキちゃんも助かるなら、そっちの方がいいに決まっている。
悪いのは向こうだ、躊躇う必要はない。
これは正当防衛だ。
僕は何も悪くない。
僕は正しい。間違ってなんかいない。
ヒーローとしては無様かもしれないけど、こうなった以上……これ以外の最善はない。
僕は自分に何度もそう言い聞かせながら、目の前のタトゥーギャングのリーダーに向かって……魔力の塊を放った。
「う……う、うわぁぁああああ!? な、何だよ今の!?」
「おいおい……嘘だろ!?」
覚悟を決めると同時に、僕の手の平から巨大なレーザーのような魔力の塊が斜めに向かって空へと放たれ……タトゥーギャングのリーダーの上半身は、その極太のレーザーに包まれた。 極太のレーザーは、タトゥーギャングのリーダーの上半身を飲み込んだ後、そのまま廃棄ビルの壁を貫通し空へと消え去る。
自分で言うのもなんだが……凄まじい威力だ。
……やってしまった。
そう激しい後悔の念を感じたその瞬間、
『……よかったのか?』
僕の頭の中で、聞こえてはいけない何かが聞こえた。
「っくそ……黙れ…………!」
だが僕はそれを、咄嗟に顔を振り、何も聞こえなかったと頭の中で繰り返し呟く事で誤魔化す。
大丈夫だ……僕の判断は間違っていない、大丈夫。
タトゥーギャングのリーダーは……大丈夫だ、生きている。
ぴくぴくしていて、上半身の服も全部なくなっていて、焦げたように肌が焼けているけど……ちゃんと生きている。
「……良かった」
自分でやった事とはいえ、ちゃんと生存を確認出来た事に、僕はほっと胸をなでおろす。
「何が良かったんだ? なあ? なあなあなあなあ!」
だがその直後、僕の背後で、今倒したはずのタトゥーギャングのリーダーの声が……はっきりと聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!