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「おらどうした? もう一回使ってみろよ? ……出来ねえよな? 出来ねえよなぁあ! 出来るなら最初っからこんなまわりくどい事しねえもんなぁ!」
頭が良い。ずる賢いとでも言うべきなのだろうか?
僕が出し惜しみをしている事もちゃんと頭に入れて戦っている。
だから多分……強いんだと思う。
こいつの言う通り僕は今、さっきのように力を使う事は出来ない。
さっきとは違って、こんなほぼ零距離で力を使えば……このタトゥーギャングのリーダーが本当に死ぬかもしれない。
さっきの距離でだって、魔法の塊である分身が死亡すれすれな状態になっていたのだ。出来るはずがない。
「いやはや、でもすげーなお前。さっきの……只の魔力の塊だろ? 魔法じゃなくて魔力の塊だけであんな馬鹿みたいな力出せる奴とか見た事ねえよ」
「げほ……っげほ! げほ! ……っく」
「魔力の塊を飛ばすか……俺のスキルにも弱点ってのがあったんだな」
だがそこで、タトゥーギャングは締め付ける手を緩めて僕を地面へと落とした。
……一体どういうつもりだ?
「おっと、動くなよ? 動いたらお前の頭にすぐにこいつを突き刺してやる」
そう言うとタトゥーギャングは、鈍い光を放つナイフの刃をちらつかせてきた。
近距離なら魔法より武器の方が効率が良いってか? ……だけどこれで本当に手だし出来なくなった。
僕は魔法障壁が強いだけで、鋼鉄の肌を持っている訳ではない。
「でもまあ、魔力の塊をぶつけるなんて芸当。出来る奴はこの街にはお前除いて多分いないだろう」
「……何が言いたいんだよ」
「つまりお前さえいなけりゃ俺はこの街では最強って訳だ。お前という邪魔がいなけりゃ俺はここで好き放題出来る」
「だからあんたらにちょっかい掛けなければいいんだろ! 約束するよ。だから僕達を解放してくれ」
「っは、『僕達はまだ只の高校生だから危害は加えませーん』ってか? そんな口約束しても仕方ねえんだよ」
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