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何をさせるつもりなのか、タトゥーギャングのリーダーはナイフを配下のタトゥーギャングに渡すと、そのままユキちゃんへと歩き出した。
そこもやっぱり油断はなく、僕の両腕を押さえつける係とナイフを突きつける係、三人態勢で僕の動き封じている。
「おい女、動くなよ」
「……抵抗した所で無駄なのは理解できない程、愚かではありませんわ」
タトゥーギャングのリーダーはそう言うと、今度は僕だけじゃなくユキちゃんの両腕をタトゥーギャングに抑えつけさせる。
「……何をするつもりなのさ」
「っは……お前次第では何かしちゃうかもなぁ」
「どういう事だよ僕次第って」
「お前……俺達のグループに入れ」
そして放たれる意味不明な言葉。
「お前がいればこの街じゃなくて、他の街にもでかい顔出来るかもしんねぇだろ? まあそうじゃなくても……お前みたいな危険な奴は傍に置いといた方がいいんだわ」
……ヒーローを目指している僕が、自分から悪とも呼べるグループに入る?
ふざけている。
「そんなの、断るに決まってるだろ」
「だろうなぁ、例え『YES』と答えても、その場での口約束で簡単に裏切れるしなぁ?」
「だから何が言いたいんだよ。はっきり言えよ!」
「この女をお前の手で傷つけろ」
そんなタトゥーギャングのリーダーの突然の言葉に、僕は一瞬思考が回らなくなった。
……っは?
こいつは何を言っているのだろうか。
僕が? ユキちゃんを? 何のために? 理由もなく? 傷つける?
「そしてその光景を映像にして残す訳だ。そうすれば……立派なヒールの出来上がりだ。簡単だろ?」
「な、何のためにそんな事をしなくちゃいけないのさ!」
「そんなもん、手を汚してない奴がいくら手を汚している奴の味方になるって言ってもいくらでも裏切れるだろ? だから同じように手を汚させるのさ……悪に染まってもらうためにな」
……汚い。
映像にわざわざ残そうとしてる所がまた汚い。どれだけ僕が今からユキちゃんを傷つけて、ユキちゃんが後で仕方が無かった事と許しても、映像となれば話は別だ。
一生の汚点として、知らない者からすれば僕が悪人としての記録として残り続ける。
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