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「よくあんだろ? 相手の弱みを握ってそいつを思うがままに動かす方法。テレビのドラマとかでさぁ……それだよそれ」
「そんなの、僕がする訳ないだろ!」
「するとしないとじゃ、お前らの傷つき具合が全然違うぜ? 大人しくやるって言うならそうだな……その女の顔と胸をそれぞれ三回ずつナイフで切り刻むだけで許してやる」
「やらなかったら……どうなるんだよ」
「お前も、この女も、そこに倒れてる三人も……切り刻んだあげく、好き放題遊ばさせてもらう」
汚い……汚い取引きすぎる。
ヒーローに憧れている僕が悪の所業にも近い真似事をしろ? そしてその光景を映像に記録して残す?
出来る訳が……、
「……っ! な、何をしますの!」
そうこう考えている内に、タトゥーギャングのリーダーはユキちゃんに向かって手始めに、ナイフで制服の肩部分を軽く斬りだした。
肩の制服部分が切り落とされ、肩から左腕の肌がさらされている状態だ。
「はーい、優柔不断だからもう斬り刻み始めちゃいまーす」
……っくそ、考える余地すら与えないつもりか。
どうすればいい、僕はどうすれば?
……僕がこいつのグループに入る代わりに、ここでユキちゃんに一生残るかもしれない軽傷を僕がつけて助かるか。
こいつのグループに入らず、皆……一生に残るだろう酷い傷を負わされるか。
「もしあなたがそれでいいというのなら……私は構わないからやりなさい! これは元々……私の責任でもあります。それが一番軽傷で済むなら……おやりなさい!」
ユキちゃんはそう言ってくれているが……ナイフだぞ? 一生残る傷になるかもしれない。
痛みだって相当なはずだ。
何より……そんな屈辱、僕が耐えられない。
でも、それが最善の方法だと言うならば。僕はやるしかない。
「あ、そうそう。その二倍の量を倒れている男三人にそれぞれやるでもいいぞ? 女は無傷で済む」
だが、悪魔の囁きが更に僕を苦しめ始めた。
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