第一章 ダブルフェイス

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「倒れてるやつらもお前と同じ学校なんだろ? だったら別にこいつらでもいいぜ……ただし男だから二倍の量だけどな」  各六回ずつ……胸と顔で合計十二回、それを三人分で三十六回?  そんなの軽傷じゃすまない……言い訳のしようもない悲惨な状況が映像として残る。  何より三人は気絶している。やるとしても……無断で傷つける事になってしまう。  そうなれば……恐らく、いや確実に僕は三人から恨まれる。  学校の皆に言われる。  いや……気絶してるから僕だってわからないかもしれないけど……『映像』が残る。  その映像を弱みにされれば、学校で騒ぎを起こしたくない僕は本当にグループに入らざるを得なくなってしまう。  となればやっぱり最善はユキちゃんに傷をつける事なのだろうけど……問題はそれだ。  今のタトゥーギャングのリーダーの言葉を聞いて……明らかにユキちゃんの目の色が変わった。 「……やりなさい」  だが杞憂だったらしく、ユキちゃんはそう言葉にして放った。 「へぇ……大人だね。じゃ……っま、大人しく三回ずつ斬られて……」 「わ……私じゃない! そこで倒れている三人をおやりなさい!」  そして想像していた最悪の言葉がユキちゃんから放たれ、更に僕は苦しめられる。  やっぱり……そうなるんだよな。 「はは! あはは! お前最高だわ! 最高の悪女だわ! あひゃひゃひゃ!」 「な……なんとでもおっしゃいなさい!」 「そりゃそうだよなぁ……さっきまでは傷つけられるのが最善だったのが、無傷で済むっていう最善が出来たならそれに飛びつくよなぁ……でもそれ『お前にとっての』だけどな」  自分が結局一番かわいい……タトゥーギャングのリーダーはそう言いたいのだろう。  間違ってはいない。僕も……結局同じだからだ。  ここで遠慮なしに力を使ってタトゥーギャング達を倒せば、それがユキちゃんや倒れているクラスメイトの三人にとって最善なのだろう。  でも僕は人殺しになる。それが嫌で……力を出し惜しみしている。
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