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「何をしていらっしゃるの! 気絶している今がチャンスですわ! 安心しなさい、あなたがやったとは一切他言致しません! 何を迷っていらっしゃるの! 映像だって……弱みにされるだけですわ! 公開される訳じゃありません!」
その弱みにされるのが僕にとって一番辛いんだ。
「こんな低級な者が三人傷ついた所で何の問題もありませんわ! それよりも……将来を約束された私が傷つく方が一大事です! それくらいわかるでしょう!」
確かに、ユキちゃんが傷ついた方が社会的に問題視されるのだろうけど……でもさ、これ、ユキちゃんが蒔いた種なんだよ?
ユキちゃんが……くだらない事をしなければ済んだ事なんだぞ?
僕だってそうだ。
「確かにあなたには辛い思いをさせてしまう事になりますが……ここで決断していただければ私は恩を忘れませんわ! 学校でだって良い思いをさせてあげれます!」
「くは! あひゃひゃ! こりゃ傑作だわ! こいつとんでもねえ女だわ」
「だ……お黙りなさい!」
ユキちゃんが恥を忍んで言ってるのはわかる。顔を真っ赤にしながら……ほとんど泣きそうな崩れた表情で言っているからだ。
本当は怖いのだろう。そして辛く……怯えている。だから本音が出てしまっている。
でも……それでも酷くないか? 自分以外はいいのか?
僕は……? 僕はどうすればいい?
どちらに転んだとしても、僕は最悪な結末しか迎えられない。
もしここでユキちゃんを傷つければ……僕は間違いなくユキちゃんに恨まれる、学校で噂を広められる。
大事になる。
取り返しのつかない事になる。
でもだからと言ってクラスメイトの三人を傷つければ……それはそれで大事だ、僕がやったと知られる事はないが……悪の道を行く事になる。
……よく考えれば同時にユキちゃんにも弱みを握られる事になるんじゃないか?
弱み……弱み弱み弱み弱み弱み。
どっちに転んでも不幸、取り返しのつかない道、道を外れる。
どうすればいい? 僕は、僕は、僕はどうすれば?
どうすれば? どうればい、
『代われ』
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「な、何ですの? 突然叫び出したりして」
「っは、頭がいっぱいいっぱいなんだろ。ガキには辛い選択だろうからな」
一瞬だ。
一瞬で僕の全身から汗が噴き出た。
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