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「おいおい……急に静かになってどうしたよ? このままだとどうなるんだ?」
ちゃんと説明するのならば、僕の言葉は『放たれなかった』。
放たれはしたが、それは僕という存在の認識でしかない。
さっきまで必死に体と言葉で抵抗の意を見せていた僕の身体が、嘘だったかのようにぴくりとも動かなくなった。
だから僕は身体を動かそうとしてみた。
でも動かない。
「っぐぁ……うぁ!?」
「って、てめえ! っが!?」
そして次の瞬間、動かそうとして動かせなかった身体が突然、認識出来ない程の速度で動き出した。
ユキちゃんやタトゥーギャングのリーダーには僕が動いていないように見えただろう。
でも僕が何かをしたというのはわかったはずだ。
僕を拘束していたタトゥーギャング三人の体がほぼ同時に、それぞれの後方に三十メートルくらい吹き飛んだからだ。
一人は壁に激突してぐったりしている。
多分……多分だけどぎりぎり生きている。そう信じたい。
『逃げろ』
僕はそう言葉にして、タトゥーギャングのリーダーに向かって放った。
でも……届かない。
僕は今、僕でありながら、僕の中で、僕と僕から見える光景を傍観している。
つまり、僕は今……自分自身の体を自分の意志で制御していない。
じゃあ今、誰が僕の身体を操作しているのか?
……それは、『僕』だ。
「おい……お前今……何やった? お、おい言う通りにその子を放してやれ」
今になって恐怖を感じたのか、タトゥーギャングのリーダーはユキちゃんを解放するようにタトゥーギャングに命じた。
だがそれも……最早今更としか言いようがない。
「おい……だ、黙ってないで何をやったか言えよ! お前の言う通り解放したんだからよぉ!」
タトゥーギャングのリーダーの焦った表情で放たれたその言葉を聞いた次の瞬間。
僕の口から……、
「……皆殺しだ」
信じられない言葉が放たれた。
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