第二章 僕とあいつと時々ラリアットクエスト3

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 その存在が確かに存在していると気がついたのは、いつの事だったろうか?  確か……七歳くらいの事だったと思う。  気付けなかったのは、その存在が僕として成り代わる時、意識が僕の内の中に閉じ込められる……つまり意識を失うせいだ。  いつの間に寝ていたんだろう? と、思う事は多々あったし、そんな事したっけ? って思う事もあったが、それでもその時までは気付かなかったんだ。  最初にその存在に気がついたのは……血の海を目の当たりにした時だった。 『だ…………だず……げで』 『こ……ごろざ、ない……で』  今でも脳裏に焼き付いていて離れない、……見知らぬ大人の男性十数人が、血まみれで地面に横たわっていた光景が。  意識を取り戻した時には、既にその光景が眼前に広がっていた。  そして血だらけの僕の手を見て気付いたんだ。  僕がやったんだって。  それと同時に気付いたんだ、僕の中に……僕じゃない何かがいると。  『ダブルフェイス』。  それが僕の持つスキルの名称だった。  もう一人の僕は……只の二重人格による存在ではないのだ。  僕が何かを考えている間にも、並列してもう一人の僕が全く違う事を考える事が出来る。  二つの問題があったとして、僕が片方の答えを考えている間に、もう一人の僕が片方の問題を考える……という事が出来る。  一人が僕の体を動かして……もう一人は痛み等の神経を遮断して内側へともぐり、リラックスした状態で作戦を考える……そういった事が出来る。  それが『ダブルフェイス』というスキルの能力だ。  だがこのスキルには欠点が二つ程ある。  一つは、一人しか本体である身体を動かす事が出来ない事。  故に、身体を動かしていない一人の意識は、強制的に内側へと閉じこもる。  そしてもう一つは、二つの意識が全く異なる人格、性格、存在であるという事だ。  二人の全く違った人間が、一つの身体を動かしていると考えればわかりやすい。  そうなればどうなるか?  答えは簡単だ……どちらが身体を動かす本体になるか、常に揉め合う事になる。  つまり本来ならば、二つの潜在意識は、お互い納得した形で配慮しつつ、一つの身体を共有する必要性があるのだ。
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