第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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 相手方がどこまで俺たちのことを調べていたのかはわからない。だが、ゼクセルおじきやマクシムさんたちが、姿をくらました相手を探す力に長けていないのを知っている様子だった。  だから短期決戦でゼクセルおじきや、サトウチのおっさんや、他の連中が動きだす前に俺たちを捕まえて隠れるつもりだったのだろう。  最初に親父たちを捕まえたあとに、ゼクセルのおじきのような世界級の化け物が現れるなんて考えてもいなかったんだ。  奴らに、アキトを止める術はなかった。  いや、この世界の誰も、アキトを止めることは出来なかった。 『…………どいつも、こいつ……もぉおおおお!』  終始、アキトは泣いていた。ああ……この世界を恨んでるんだなって、ヒシヒシと感じた。  気付けば、感化されて俺も、メイ姉も、レイラも泣いていた。ずっと頑張っていたんだって、こんな理不尽で、自分に優しくなくて、生きているだけで何の喜びもないこの世界を必死に生きようと努力していたんだってわかったから。  なのに結局報われなくて、こんな事態になっちまって。もうどうしようもなくなって、そりゃアキトだって怒るのも無理ないかって、泣きながら笑ってた。ただでさえ窮屈な世界で生きてるのに、それ以上に追い込もうとしてるんだ。  俺に、暴れるのをやめろなんて言う権利はなかった。言えなかった。 『……馬鹿野郎』  ただ、全てが終わってそれだけは言えた。もっと早くに自分の感情に正直になって、違う場所で暴れてたら、まだ別の方法が残されてたかもしれないのにって。溜めこみすぎなんだよって、もっとわがままになって良かったんだよって、そう思ってたら、自然と言葉にしていた。 『この……化け物』  アキトの力はすさまじかった。それこそ、どんな手段で立ち向かおうと勝てないと思わされるくらいに、一瞬にして全てを破壊しつくした。  俺たちを捕まえようとしていた追ってはもちろん全員殺された。残虐なまでに乗っていたヘリや車などの乗り物から引きずりだされ、いたぶるように、自分が受けた苦痛を全て味合わせるかのように一人残らずなぶり殺していた。 『ぐぅ……痛ぇ……痛ぇよ』  でも、一度プッツンしたアキトは、追ってを殺すだけでは止まらなかった。
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