第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

24/38
前へ
/596ページ
次へ
『助けて……誰か助けてぇぇぇ!』  その事件が起きてから少したったくらいの頃だろうか? アキトの身体に投入したナノマシンの経過の定期調査のために、メナスばあちゃんの研究所へと連れて行かれた時のことだった。  親父もおふくろも、ただの定期検査だからとメナスばあちゃんに任せっぱなしだったから、こんなことになっちまったのだろう。  メイ姉を出し抜いて、一緒にいたレイラも振り切って、一人で研究所をさまよい歩いた結果……誰にも気付かれない場所にアキトは一人で閉じ込められた。最初は馬鹿かこいつはと楽観視していたが、事態は次第に重くなっていった。  よほど使われていない区画だったのか、監視カメラも設置されておらず、助けが来なかったのだ。メナスばあちゃんの研究所はとてつもなく広い。  それこそかつて人類がメビウスの手によって滅びかけた時、人類の避難所として使われたくらいには広く、そして使われていない場所もまた多かった。  結果、アキトは二日間もその部屋の中で過ごすことになった。 『怖い』 『孤独だ』 『嫌だ』  そんな負の感情が溢れ、心の叫びがアキトの中でずっと叫ばれていた。  普段から俺は、アキトの力が暴走しないようにストレスの緩和に努めていた。だが、飢え、孤独、寂しさ、虚しさ、その全てが処理しきれないストレスとなってアキトの中へと蓄積されていった。  どうなったと思う? ナノマシンでも、俺の力でも抑えられないくらいに、アキトのスキルが覚醒を始めたんだ。  ……このままだと、ちょっとした行動でも世界を滅ぼしてしまうのではないかと思えるような力の膨張がな。  助けは来ず、俺とナノマシンでも力は抑えきれない、俺だけじゃストレスを処理しきれない。  そんな俺がとった最後の手段が、アキトから身体の制御を奪い取り、そもそものストレスの原因を断つという方法だった。 『……良かったな』  出てくるつもりはなかった。身体の制御を奪って、アキトの生活を脅かすつもりだってなかった。でも……どうしようもなかった。  アキトにストレスを与え続ける原因を、この俺が処理するしかなかったから。
/596ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78354人が本棚に入れています
本棚に追加