第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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 人を、俺たちを追い詰めたこの世界の住民を恨んでいた。  アキトのストレスを暴発を防ぐためなんて、俺が暴れるための言い訳でしかなったんだ。俺自身が、ムカついて……殺したくて仕方がなかったんだ。  今だから、そう思える。 『なんだよ……久しぶりに会って説教か?』 『…………トキア』  反抗期というやつなのだろうか? 久しぶりに顔を見たにも関わらず、俺はツンツンしてた気がする。どんな言葉で取り繕われたところで、俺の生活が返ってくるわけじゃなかったから。 『すまん……トキア、すまない』  なのに、親父はいつも自分が悪いかのように悲痛な表情で俺に謝っていた。何も言っていないのに、むしろ反抗的な態度で言い返してたのに、全部わかっているかのような表情を浮かべていた。俺に、嫌な役目を押し付けてしまったかのような後悔した表情で、いつも俺を見ていた。  贖罪するように、ダイブネット内で俺に小遣いを与え、少しでも気が楽になるようにと行動する親父がいつの日か嫌いになっていた。  そんな態度で接して欲しいから俺は犠牲になったんじゃない。  そんな顔をして欲しくて、俺は死んだんじゃない。  それをわかってくれなくて、いつの日からか親父の顔を見るだけでイライラするようになった。 『トッキー、あのね、あのね! 今日学校でね!』 『レイラ……トッキーって言うのやめろ。アキトにばれたらどうするつもりだ』 『だ、大丈夫だよ。アッキーは、私がリンクペンダントを買ったこと知らないはずだし、ここはプライベート空間だから絶対にトッキーのことはばれないよ!』 『ばれなければいいってもんじゃないんだ。どっかでボロが出ないように徹底するべきだろ? 特にお前なんてアホでボロが出やすいんだから』 『で、でも!』 『いいか、俺がそれを望んでるんだ。俺に会いに来なくていい……俺という存在は最初からいなかったことにして欲しいんだ。なら、今この状況が良くないってことくらい……わかるよな?』 『…………うん。わかった。トキア』  ダイブネットが繋がったからと言って、俺の生活が大きく変わるわけじゃなかった。  むしろ、改めて俺から皆が離れていくのを体験させられただけ。
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