第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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 ダイブネットでやることと言えば、ゲームで暇をつぶすことくらいだろうか。むしろそれくらいしか俺に楽しめるものなんてなかった。皆との関係を断ったのだから当たり前と言えば当たり前だが。 『あ? 話しかけんな、殺すぞ』  ダイブネット上でも友人はいなかった。基本的に俺が人を嫌悪していたせいだろう。むしろゲームをしていたのも、合法的にムカつく奴らをぶっ殺してストレスを解消できたからだ。  ……たまに普通の、ゾンビをぶったおすゲームとかもやってたりはしたがな。  まあ、とにかくそうでもしないと俺は我慢出来なかったんだ。  この世界には身勝手で糞みたいな人間が多すぎる。アキトを通して、そんな連中を沢山目の当たりにしてきた。そして、そんな連中から俺はアキトを守ってきた。 『やめろ……返せ、僕の身体を返せよ!』  というのは建前で、本当は俺が、俺自身がそうすることを望んでいただけなのかもしれない。  いや……きっとそうなのだろう。あの時感じていたストレスは、アキトのものではなく、多分俺自身のものだったんだ。  どうしても許せなかった。俺たちを不幸に追い詰めようとする連中が。  そんな連中を前にすると、あの日、俺たちの日常を奪った連中を重ねてしまって、止まれなくなっていたんだ……他でもない、俺自身が。  まるで、あの日の鬱憤を晴らすように。復讐するように、俺はアキトの身体を奪ってはアキトを追い詰めようとする連中を叩きのめした。  そうやって、アキトを守っているつもりでいた。  そうすることで、アキトのストレスを制御しているつもりでいた。  そして、スキルの発動を抑えることで、管理している気になっていたんだ。 「あー…………馬鹿だな、俺は」  玉座から放たれる光に吸い込まれて行ったアキトを見送った後、消えゆく自分の身体を見つめながら俺は、人生最後になるだろうため息を漏らした。  過ちに気付くのが遅すぎた、そんな後悔を感じながらも俺は何故か笑みを浮かべていた。  本当であれば、あいつはとっくの昔にヒーローになっていて、今頃皆無事に帰還していたのかもしれない。いや、今このタイミングまで引っ張れたからこそアキトの力が黒幕にばれずに済んだと喜ぶべきだろうか? 「ま、わかんねえか」
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