第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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 確かに今、僕には父さんが作った宇宙空間でも滞在できるようになる魔法道具はない。しかし――、 「宇宙空間に放り出したくらいで、僕を殺せるとでも思ってるのか?」  魔法道具は所詮、魔法を基準にした道具でしかない。その理を自分で構築することができるなら、魔法道具がなかったとしても問題ない。 『なるほどね……まあそれでも君の終わりは変わらないけどね』 「……エクスプロージョン級の爆発程度じゃあ僕は死なないぞ?」 『そんな魔法が効かないことくらい、ダイブネット空間で検証済みだよ。これから起きるのは……君のお父さんと英雄ゼクセルが僕に教えてくれたその上位魔法。太陽のエネルギーをぶつける魔法、プロミネンスさ……それも、一発だけじゃなく、全三十発……肉片も残らないだろうね』 「それは確かに痛いかも」  揺れがドンドンと激しくなってきている。恐らく、設置していた魔法発動の媒体が作動しようとして発生している揺れなのだろう。  でもその揺れは、僕が溜め息を吐くと同時にピタリと収まった。 「それじゃあ、会話の続きをしようか」  そして僕は、何食わぬ顔で再び黒幕に質問を投げかけようとする。 『……何をした? プロミネンスは? プロミネンスはどうした?』 「世界を統べて、どうするつもりなんだ? 皆をあんたに従わせるだけなのか?」 『質問に答えろ……何をした?』 「質問してるのはこっちなんだけどな。なんでそっちの質問ばかり答えなきゃいけないの?」 『……っ?』  その時、耳を突く音が周囲から発生する。黒幕が何かをしたのは一瞬でわかった。 『機能が作動しないなら仕方がない。無論、用意しているのはこれだけじゃないのさ! 能ある男はね? 万が一を考えて四手、五手は先に用意しておくものなんだよ!』 「何をしたの?」 『それを説明するよりも早く……君はさよならだ』  黒幕の勝ち誇ったような笑い声が室内に響き渡る。それと同時に、僕の耳を突いていた嫌な音は消えてなくなった。 『……は?』  共に、黒幕の笑い声がひっくり返る。 『き、消えた? 360度、全方向から射出した高エネルギーの熱源砲撃が直撃直前で突然消失……? 一体……何で? 何をした? 君は一体何をしたんだ?』
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