第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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 皮肉るように笑みを浮かべ、閉じ込められていた施設の外へと足を踏み出した瞬間、僕の視界は突然発生した閃光によって覆い尽くされた。 『何故だ……何故効かない? 何故宇宙空間で滞在できる? 君に……そこまでの力はなかったはずだ。そんなデータはなかった』 「お前今……僕ごと、この施設を狙っただろう? 統率しようとしている人間を殺すのか?」 『大きな目的を果たすのに犠牲はつきものさ……君は、その犠牲を出しても良いほどに危険だと判断した』 「笑えるね。お前も……お前が嫌ってる人間と一緒じゃないか。今を重んじてる。今なんとかなればいいと切り捨てようとしている」  僕がそう言うと、それ以降、黒幕は一切の返事をしなかった。最早会話をするだけ無駄と感じているのか、奇妙な静けさが周囲を支配した。直後、僕は人々が収容されている施設を飛び出し、周囲に何もない、隕石とその塵が漂うだけの何もない空間を浮遊する。 『何故だ……何故効かない?』  無防備に、誰に対しての被害もない空間に移動した僕に黒幕は何度も何度も攻撃を仕掛けてきた。何としてでも僕を殺したいのだろう。 「そろそろ教えてやるよ。どうしてお前の攻撃が僕に効かないのか。僕が……宇宙空間に滞在出来るのか」  どこから攻撃しているのかはわからない。恐らくは空間転移の魔法を応用した全包囲射撃なのだろうが、僕には一切通用しない。結界も破壊する威力であっても関係ない。 「魔法って、どうやって使うか知ってる?」 『君は、馬鹿にしているのか? 理……複雑な術式と計算、イメージによる形成と魔力による放出、その全てが整って撃ち放たれる奇跡の力だ』 「そう。そしてそれは父さんが作った宇宙空間に滞在できる道具も一緒だ。かつてこの世界を窮地に陥れたインフィニティが使った熱線を放つ化学兵器も魔法も同じ」 『何を……言っている?』 「全ての現象には必ず、それを発生させるための条件が存在する。その条件を崩してしまえば、そもそもその現象は起きないし、起き続けない」 『まさか……干渉したというのか? 一度撃ち放った魔法の理に、力に?』  信じられないのか、取り乱した声が脳内に響き渡る。  この力は、僕の力じゃない。圧倒的な知能を誇る兄さんが僕に残してくれた力。  あらゆる理を理解し……分解する究極の技法――『リセット』。
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