第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

37/38
前へ
/596ページ
次へ
 かつて、父さんが話してくれた未来を救った英雄の一人が使ったという技。その人は完璧に理を理解したうえで分解したようだが僕は少し違う。崩すための最低条件を満たしたうえで、力でゴリ押して崩壊させている。僕だから出来る……再現方法。 「僕に生半可な魔法は通用しない……僕の力を超える魔法か、僕の理解を超える魔法じゃなきゃ僕には届かない」 『ならば……実弾ならどうだ?』  それでも、黒幕は怯まなかった。むしろ、それくらいならまだどうにでもなるとでも言いたげな、自信に溢れた声色だった。  直後、僕の視線上にある遥か遠くに存在した隕石が超速で接近する。それも一発だけじゃなく、数十発。 『魔法を分解する? だからどうした? 魔法は使い方によって応用が利く! 弾は無限にあるぞ……周囲にある全ての塵が君を殺す弾丸となる!』  魔法の応用で周辺の隕石群を僕に向けて飛ばしているのだろう。確かに魔法の影響で接近している物体なので分解のしようがない。 『目の前ばかりに気を取られていていいのかな? 隕石は……君に向かって飛んでいるんだ。君のいる方向に飛んでいるわけじゃない!』  言われてから周囲を見渡すと、ほとんどの方角から隕石群が接近していた。こいつ、全方位からの攻撃好きだな。  言葉通りであるなら、いくら避けたところで僕に向かって飛んできているため避けたところで意味がない。追跡の理を外す方法もあるけど、このままだと皆が眠っている施設に被弾しかねない。  だから僕は、粉々になるまで隕石を全て残さず殴って破壊した。 『……は?』  間の抜けた黒幕の声が響き渡る。今度は、それでもまだ策があるかのような余裕はなく、一瞬の間に砕け散った隕石群を見て心底不可解に思っているような声だった。 『何を……した? 今度は一体何なんだ? 一体なんの力で……?』  「単純に、殴って破壊したんだよ」 『殴って破壊しただと? 君は今、一切動いていなかったはずだ!』 「移動したよ? ちゃんと移動して一発ずつ全ての隕石を粉砕した」 『嘘を……つくな!』  余裕がなくなってきたのか、声を荒げ始めた黒幕に対して、僕は皮肉った笑みを見せる。
/596ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78355人が本棚に入れています
本棚に追加