第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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『僕はこの戦いを記録している……映像を確認しても君が動いた様子はない。突然隕石が粉々になった……何をした? 本当は何をしたんだ?』 「殴って粉砕しただけだって、何度も言わせるなよ」 『君が何かをしたのは間違いないのだろう……だがその何かがわからない。魔力の発生も見られなかった……どういうことだ?』  ……少し油断していた。黒幕は僕の力を手に入れることを諦めていない。まさか魔力が発生しているかどうかまで観察しているなんて思わなかった。  とはいっても、結局僕を倒して僕の身体を手に入れなければ意味がないわけで。 『答えろ……君のその力は何だ? 仮想空間内では……君にそこまでの力はなかったはずだ』  つまり、何も問題がない。 『君にその力を与えた存在がいるはずだ……君の双子の兄弟から受け取った力か?』 「これは、僕に元々あった力だよ。でも、僕を守るために……兄さんがずっと封じ込めてくれていた力」 『封じ込めていた……? 君を守るために……?』 「全てを滅ぼしかねない僕を、兄さんがずっと守ってくれてたんだ……皮肉だよね。その全てを滅ぼしかねなかった力が、皆に忌み嫌われてたこの力が、この世界を救うかもしれないなんてさ」 『その力はスキル……なのか?』 「スキルだよ。スキルだからこそ、脳内に直接干渉する力を持っていた兄さんはこの力を抑えられたんだ」 『聞いたことがないぞ……未来も過去も、全てを見てきた僕にさえ、そんな莫大な力が突然手に入るようなスキルは知らない。何なんだその力は? ……君は一体、何者なんだ?』  何者と聞かれて、僕は悲しい気分に陥った。少なくとも、僕は、この世界に居てはいけないのは間違いなかったから。居てはいけないからこそ、僕はずっと守られて生きてきたから。  子供の頃は理解出来なかったけど、今なら理解できる。僕は――  産まれてはいけなかった。  存在することが、最早許されない。そこにいるだけで、全てを破壊しかねない。壊すことでしか、誰かに救いを与えられない。そしてそれを抑えることは叶わない。望まなくても力が僕から溢れ続ける。  僕のスキルが何なのか? 僕は一体何なのか? その答えを、僕は再びこの世界で目覚めた瞬間におのずと理解出来た。 僕は――、そしてこのスキルの名称は――、
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