最終章 「最強人種」

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『最強人種……だって? 何を根拠に……?』  根拠はあった。でもそれは、他人には理解できない。  もしかしたらただの傲慢かもしれない。それだけ僕は誰にも負ける気がしなかった。負けるイメージが出来なかった。自分がどうやったら敗北するのか、その想像すらできない。  どんな手を使われても。どんな卑怯なことをされても。何があっても対処できる。  それは自信から断言しているのではない、ただの事実。 「何をしてきてもいい。でもハッキリ言ってやる。何をしても僕には勝てない。あんたが今からパワーアップしようが、捕まっている人間全てのスキルをあんたが得ても。捕まっている人間全てが僕に襲い掛かっても……無駄だ」 『無駄……? ははっ……さすがに乾いた笑みが出るね。自惚れているんじゃないか? 全人類を相手に勝てる? 何が来ても勝てる?』 「……どうして最強とつくかわかるか? 誰よりも強いからだよ」 『かつて、英雄ゼクセルも、英雄岡崎茂も、全人類の力が合わさった時、どんな敵が立ち塞がろうと乗り越えることが出来ると謳った。最強人種とは、この世界に住む人間全てを指す言葉であり、個人ではない』 「確かにそうだったかもしれない。でもその定義は僕が生まれた時に変わった。全人類が力を合わせても、僕には勝てない。いずれ世界を覆い尽くす黒い影が迫っても、インフィニティとかいうのが目の前に立ち塞がっても……僕一人でどうにでも出来る」 『……は』  まるで信じていないのか、念話通信を通じて黒幕は笑い声をあげる。  しかしどうでも良かった。 『……なに溜息をついている?』 「お前と会話するのが疲れた。もういいから終わらせよう……結果が全てだろ」  そう言い切ってから数秒間、静けさが漂う。しかし数秒後、炎、雷、水、氷、土、風、闇、光、全ての属性の弾丸と、気で作られたエネルギー弾。魔力弾が無数に僕の周囲に迫った。  5分くらいだったろうか? 芸のない攻撃を受け続けたが、結局無傷で乗り切る。 「満足したか?」 『何をしているんだ……? 君はその場から一切動いていない。何かをした素振りもない。さっきといい……君は一体なにをした?』 「自力で気付けない時点でお前は僕に勝てないんだよ……教えてやろうか?」 『…………?』 「時を……止めたんだよ」
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