最終章 「最強人種」

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 僕は今、0.0000001秒を1秒間隔として思考し、そして行動することができる。それが最強人種のもたらす力の恩恵の一つ。現状支配。 「時間は支配できない。だから僕は、今を支配する」  これが何を意味するかわかるだろうか? つまり―― 「お前は絶対僕に勝てないってことだよ」 『それは…………これを止めてから言うんだな!』  僕の宣言が聞こえなかったのか、黒幕は諦め悪く叫び散らした。直後、遥か後方から一つの熱源が僕に接近する。それも巨大で、隕石のようにごつごつした肉体をもった化物と共に。  僕はため息を吐きながらそれに視線を向ける。 『君にこの究極の力を止められるか? 君の父親……岡崎茂が編み出した自信を魔法として撃ち放ち、気によって練り上げた肉体で全てを粉砕する究極の魔法「アポロン・オブ・俺」を!』  顔面を高速回転させながら光の速度で接近する太陽の熱を帯びた筋肉の塊が僕に接近していた。 『時に干渉する力がどうした? 圧倒的質量を持った力そのものをどうやって対処する?』 「絶対に僕に勝てない理由が、現状支配を僕が使えるからだと思ってるのか?」 『な……?』  僕はそれを、片手で受け止める。 「単純な身体能力、魔力、気の量、スキルによる力……その全てが僕に負けてるんだよお前」 『な……な……?』 「父さんの真似をしたくらいで僕に勝てるとでも? そんな魔法……僕にだって使える」  僕の片手に支えられて、高速回転をし続ける黒幕。さすがにずっと支えるのも疲れるため、僕は支えている片手を経由して黒幕に気と魔法を送り込み、『リセット』を発動した。  直後、黒幕の身体は徐々に元の姿へと戻っていく。数秒後、僕の目の前に元の黒幕の姿……セス=ティモープが姿を現す。 「で、どうする?」  問いかけるが、この結末をまだ信じれていないのか、黒幕は言葉を放とうとはせずにわなわなと震えている。 「僕としてはこれであんたとの戦いは終わりにして、次に行きたいわけだけど」 「次……だと?」 「あんたの影に隠れて……あんたを利用してた奴のことだよ」 「何を……言っている?」  自分自身でも気付いていないのか、黒幕は心外そうに僕を見つめてくる。
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