最終章 「最強人種」

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『気付いてたんだ。いや……君なら気付くか』  その瞬間、黒幕の背後に次元の裂け目と思われる歪が現れると共に、そこからセス=ティモープとは異なる声が脳裏に響き渡った。  直後、徐々にそれは姿を現す。そこから現れたのは、鋭くもどこか優し気な目が特徴で、見つめられれば不思議と吸い込まれる優しさの感じられる美形の男性。  ……若き日のゼクセルおじさんに全く同じ容姿を持った男だった。 『……へぇ』  次元の裂け目から現れた存在に見つめられ、その存在は感心したような声で呟く。 『この姿にもっと驚くと思ったんだけど。冷静だね』  そう言いながらニッコリと笑みを浮かべると、その存在は次に若き日の父さんへと姿を変える。 『おや?』  姿が変わるのを黙って見続けていると、今度は若き日の母さんに、ルクおばさんに、そして最後に、どこか艶めかしい色気を放つ、右目に大きなクマのある美しい黒髪の男へと変化した。 『そこまで反応が逆につまらないな。もっと驚くかと思ってたけど』 「この期に及んで何に驚く必要があるんだ? 何があってもおかしくない……そういう状況。いや、そういう状況にあんたが慣れさせたんだろ?」 『ふ……ふはは!』  何が言いたのか理解したのか、黒髪の男は愉快そうに笑い声をあげた。  黒幕……いや、もう黒幕でもなんでもない。ただ利用されていた一人にしかすぎないセス=ティモープには不可解だったのか、困惑した表情を浮かべている。 「き……貴様、何者だ?」  突然背後から現れた第三者に動揺し、セス=ティモープは声を張り上げる。 『ん? 僕? 僕はそうだね……かつては君だった存在かな?』 「何を言って……?」  この状況を楽しんでいるのか、新たに現れた男は次に、目の前にいるセス=ティモープと同じ姿になる。何を言っているのか理解できないのか、セス=ティモープは驚愕の表情でその存在へと向けた。 『そうそう……そういう顔が見たかったんだ。君はどうして冷静なのかな?』  その問いかけに、僕は答えずに黙り続ける。 『答えは……君がもう全てに気付いているからだ。そうだろ?』 「……全てじゃない。少なくともあんたの名前までは知らないよ」 『ああ……名乗り遅れてたね。僕の名前はデイズ=エンド……改めて、よろしく』  そう言うと、男は再び先程の目元のクマが特徴の姿へと変化する。
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