最終章 「最強人種」

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『……この名前を聞いても、驚かないんだね』 「どうせそれも偽名なんだろ? 僕が……いや、父さんたちも聞いたことのある名前の時点で、お前は過去にいた誰かの名前を利用している」 『偽名…………か。偽名…………ねぇ?』  デイズと名乗る男は、突然不敵に笑い出した。僕の推測が、間違っているといわんばかりに。 『偽名じゃないよ。正真正銘、僕の名前はデイズ=エンドだ。偽りというのであれば……むしろこの姿の方が偽り』 「姿の方が? ……さっき色んな奴の姿になってたけど、その姿が本当の姿じゃないのか?」 『僕に決まった姿はない。いや捨てたといった方が正しいかな……なんせ、僕の身体は一巡前のこの世界で失われてしまっている。この姿も、いまや英雄と呼ばれるゼクセル君の最大のライバルであり、友だった男の姿を真似てるだけだよ』  ……わけがわからなかった。このデイズという男の言葉がわからないという意味じゃない。  この男がどうしてこんなにも余裕で、笑っていられるのかが心底不可解だったからだ。  別に追い詰めたわけでもないが、僕の力は見たあとのはずだ。なのに、この男はまるでどうでも良さそうに楽しそうに笑っている。僕と、セスすらも置いてけぼりで。  そう、この男は今、何がどうなろうとどうでも良さそうなのだ。  なら、何故今現れた? この男が……全ての黒幕じゃないのか? 『答え合わせをしようか?』  そんな僕の表情を読み取ってか、デイズはニッコリと微笑みながら語り掛ける。 『折角だ。セス=ティモープ……君も聞いていればいい。ここの状況を、映像を通して見ているだろう電脳世界に囚われた英雄たちも……耳を傾けるといい。僕が全てを話してあげるよ』  あまりにも見えない目的に、利用されていただろうセスも、その存在に薄々気付いていた僕もわけがわからずに困惑する。 「全てって……どういうこと?」  故に、僕は真意を確かめた。それを話すこの男の意味を知るために。 『全ては全てさ』 「どうして……今?」 『ああ…………そういうこと?』  僕の真意を読み取ったのか、デイズは理解したかのような顔で手をポンッと叩く。  僕にはこのタイミングで、この男が全てをさらけ出す意味がまるで分からなかった。  全てを晒すことで僕に阻止されるとは思っていないのか?
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