第一章 ダブルフェイス

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「よぉアキト! 久しぶりじゃねぇかよ! 中学の卒業以来か? 仲良くしようぜ、な?」 「あ……いやその、僕は……」 「ああ? 聞こえねえって。そうだ、今日入学式が終わった後にカラオケにでも行こうぜ! あー……今日俺財布忘れちまったからお前もちで頼むわ」 「えっと、あの。僕、入学式が終わったらすぐに帰って来るように言われているから……さ」 「は? 何お前? 断るの?」  その時、教室の出入り口の扉が突然ガラッと開き、これから僕達を一年間色々と世話を焼いてくれるであろう、担任の教師が教室に入って来た。 「っち……また後でな。勝手に帰るなよ? いいな?」  それを見て、中学校の頃のクラスメイトは自分の席へと戻って行く。 「何々今の……もしかしてあの水色の髪の子、中学校でいじめられてた感じ?」 「えーやだー、かわいそー」  だが最悪な事に、たった今の出来事をクラスメイトのほとんどが見ていたようで、 「なあなあ、さっきあいつに絡んでたけど知り合いか?」 「ああ、中学の頃のクラスメイトでな。気持ち悪いオタク野郎だよ、中学校の頃も図書室で漫画ばっか見てんたんだぜ」 「まじかよ……いいじゃん、丁度いい奴がいるじゃん」  こそこそと噂話をされるわ、僕の中学校の頃の事を広めるわで最悪な事このうえない。  おまけに見た目の悪そうな人達グループが僕を見て、丁度良いとか言っちゃってるし……これって完全にパシリ要員としてって事だよね?  う……鬱だ。 「おらおらそろそろ静かにしろよー。とりあえずこれから出席番号順に出席確認するから、名前を呼ばれた奴は返事して自己紹介してくれ。顔合わせだからな」  そして既に悪い印象を植え付けられてしまった状態での自己紹介が始まろうとしている。  これもうどんな自己紹介して取り繕っても手遅れだよね? どうしよう……しかも僕、 「それじゃあまず記念すべき最初の自己紹介は、アキト=アテネ! お前からだ」  出席番号一番なんですけど。案の定、僕の名前が担任の教師により呼ばれてしまう。  最悪のスタートからの自己紹介とか……これなんて罰ゲーム?
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