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「え……えっと…………」
教室の全員が僕に注目する中、ここで自己紹介スルー出来る訳が無く、僕は内心うんざりしながらも立ち上がった。
「え、えっと……アキト=アテネです。扇舞魔法中等学校から来ました。しゅ、趣味は……漫画とか、ゲームとかです。ヒーローが活躍する系の物とか特に」
僕がまず軽くそう言って見ると、クラスメイト達は呆れたような表情を浮かべながら各自で「漫画とゲームって……やっぱ只のオタクじゃん」とか言ったり、ぷーくすくすと笑い始めていた。
少し喋りにくい空気が流れ始めたが、それでも僕は言葉を続ける。
「えっと……将来の夢は……」
そこまで言って僕は、一度言葉を止めた。
突然言葉を止めたせいか、クラスメイト達の注目が更に上がる。
将来の夢。さっきも説明したけど、僕が小さな頃から憧れて止まない存在、それを今僕は目指している。つまり僕の将来の夢は……、
「普通のサラリーマンになって、普通の人生を過ごして……行く事です」
その言葉を言い終えると同時に、教室中に盛大な笑い声が響き渡る。
「さすが勉強ばっかりしてた奴は現実的な夢を見てるな! はは! お前最高だわ!」
「は…………ははは」
クラスメイトの連中は笑いながらそう言って僕を小馬鹿にする。
当然だが、これは本心じゃない。
本心じゃないけど、僕は……最終的にそうなるだろうと思っている。
何故か?
僕はヒーローに憧れている。いつか絶対なりたいとも思っている。
でも僕は馬鹿じゃない、さっき僕を馬鹿にしていた奴が言っていたように僕は頭が回る方だ。
ヒーローに憧れて、いつかなりたいと思っている。でもそれはつまり……今僕が言った将来と同義なのだ。
だってこの世界にはもう、脅威なんて存在しないのだから。
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