第一章 ダブルフェイス

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「おーいアテネ、今から一緒に帰ろうぜ? な?」  今まで全く接点の無かった柄の悪いクラスメイトにそう言われたのは、放課後の事だった。 「帰りに色々寄って行こうぜ? ファーストフードとかカラオケとかさぁ……あ、こいつらも一緒で」  そう言われて出て来たのは、朝に僕をパシリ要因にしようとしていたクラスメイト含む三人のクラスメイト。  どう考えてもこれ、僕を財布代わりにするつもり気満々だ。  勿論僕は財布代わりになるつもりはない。 「いや、僕すぐ帰らないと駄目だから遠慮しておくよ」  だから怖気付かずにはっきりとそう言ってやった。  ……ちなみにこれは、僕のお財布のために言っている訳ではない。  このクラスメイトのためを思って言っているのだ。 「はい?」  だがクラスメイトは威圧的な表情で聞こえなかった振りをする。  聞こえない振りして威圧的な態度でそうやれば、怖気付いた僕がついていくと思っているのだろうか?  残念ながら、僕は別にこいつらが怖いなんてちっとも思っていない。  確かに僕は中学校の頃、色々と言われてはいた。  だが、色々と言われていただけであって、別に柄の悪い相手が怖いという訳ではないのだ。 「おい! どこに行くつもりだ!?」  故に、僕はこうして話を聞かない相手を無視して教室を出る事だって出来る。  上手い事やり過ごせるならそれでいいが、話を聞かない相手は無視するのが一番有効な手段なのだ。 「おいごらぁ! 話を聞けよボケが! 何勝手に帰ろうとしてんだアホかてめぇ!?」  無論、それを普通に見過ごす訳が無く、僕を追いかけて廊下にクラスメイトの男子は出てくるが……ここで慌てる必要はない。  ここは学校、それも入学してから初日だ。  問題を起こせば罰せられるし、嫌がる相手に手を出せば停学にだってなる。  学校というシステムがちゃんと僕を守ってくれるのだ。 「ん? あ…………あれ」 「どうしたのレイラさん? 早く帰りましょうよ」  だから誰かが助けてくれなくても、僕は自分の事くらい自分で何とかできる。  ……っと、思った矢先。廊下を歩く僕の前方から、今一番会いたく無かった人物が、僕に向かって手を振りながら駆けだしていた。 「アッキー! 一緒にかえろー!」
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