第二章 僕とあいつと時々ラリアットクエスト3

43/43
78301人が本棚に入れています
本棚に追加
/596ページ
 無論、実際に本人の意志であんな発言をしていた訳ではなく、ゲームのシステムで強制的にそう言っていただけではある。  だが、それはやり過ぎると実際の精神に異常をきたす可能性が起きる。  ゲームへのリアリティを追及するあまりに、過度な強制行動を要求するゲームは法律で禁止されている。  他のプレイヤーを殺す事に快感を感じさせるようなラリアットクエスト3のシステムも、かなりグレーゾーンだ。  理由は明白、本人の精神に直接異常をきたす恐れがあるからだ。  勿論実際に精神に干渉していじくられている訳ではない。  でも幻覚を見せられ続ければ、人の精神は必ず狂う……それと一緒だ。  本来ならゲーム等のコンテンツをダイブネットで提供する場合、ダイブネットを提供している会社の審査を通さなければならないのだが……稀に通り抜けてしまうコンテンツが少なからず存在する。  父さんはそういったコンテンツを探している。  そしてそういったコンテンツを探し当てては、そのコンテンツがもたらす精神の影響を研究している。  父さんの本職は知人が経営している研究所の研究員だ。  大体いつも今回のように遊ぶついでに行って、危険と判断すれば即座にその危険性と対策方法を研究し始める。  何故そんな事をするのか?  父さんが言うに、『ダイブネットは千年後の世界には存在しなかった』らしい。  実際に過去に存在したという記録すら、千年後には無かったのだそうだ。  だが、ダイブネットは今や世の中の一部と言っても過言ではないくらいに、一般のメディアに組み込まれている。  なのに……千年後には影も形もない。  父さんは懸念している。  そしていつも言っている。 『俺達が知っている千年後の未来に辿り着く保証は……俺達が未来に行った時点で……』  無くなっているのかもしれない……と。
/596ページ

最初のコメントを投稿しよう!