第三章 静かすぎる日常

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 Z線理論。父さんが導き出した、時間軸における世界の繋がりと空間の在り方を説明した理論だ。  簡単にどういう理論なのかを解説すると、同じ時間は存在せず、時間の数だけ世界と空間が存在するという内容。  過去の自分に戻れる力を持った存在がいたとしても、過去の自分に戻った時点で過去の違う時間軸に存在し、元いた未来はそのまま時を刻んでいくといった感じだ。  最初は意味不明すぎて、思わず父さんの額に鼻くそをつけてしまったくらい理解しがたい内容だ。  こればっかりは証明しない事にはわからないため、僕でもどうしてそうなるのかはわからない。  だけどそうらしい。  でもそれは、『過去の自分に戻れる』人の話であって、『過去から未来に行って、未来から過去に戻って来た人』には適用されない。  何故なら検証されていないから。  前者はたまたま父さんがそういう人物と未来と出会って、証明出来たらしい。  つまりタイムリープはZ線理論が適用されるが、タイムトラベルがZ線理論通りになるのかと言われれば、そうではないらしい。  むしろ父さんは、タイムトラベルの場合同じ時間軸に存在しているとさえ考えている。  未来に影響を起こすような真似をして時間軸が枝分かれして別の世界に移行しなければ大丈夫だろう……とか言ってるけど。  結局それは証明できていない訳で、既にこの世界は父さんが行ってきた時間軸とは違う時間軸に枝分かれしている可能性が大な訳だ。 『く……ふは! それで親父はあんなげんなりしていたのか! いい気味だぜ、普段から油断ならねえ上に、いつも思い通りに事を運びやがるからな』 『僕が話したなんて父さんに言うなよ、穏便に済ませたいから話しただけだからな』 『ふん……別に今更主導権をお前から奪おうなんて考えてねえよ。未来の事ばっかり考えて……今をちゃんと考えない糞野郎のまぬけ話を聞きたかっただけだ』
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