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キキィィィーーーーーッ!
……ドン!
車が行き交う交差点は、この音と共に騒然となった。道行く人々が好奇の目で集まってくる。
弘樹(ひろき)は堅く冷たい道路に横たわっていた。全身がひどく痛み、額から生暖かい液体が流れ出ているのを感じた。
ぼやけた視界に映るのは、煙を上げて転がるバイク、へこんだトラック、そして自分を囲むたくさんの人影。
「事故だ! 誰か救急車を呼んでくれ! ……おい、しっかりしろ!」
――誰かが、俺に呼びかけている。
しかし、答えたくても動けない。体が鉛のように重いのだ。
そのすぐ後、遠くの方で別の声が聞こえた。電話をしているようだ。
「はい、交通事故が……バイクに乗っていた男性が怪我してます。年齢?……20代くらいかしら……とにかく、救急車を……」
少しずつ、意識が薄れていく。まぶたが地面に引っ張られていくように。
下へ、下へ、下へ……。
音も色も匂いも……徐々に感じなくなってきた。
何も考えられない、目の前が真っ白だ。弘樹はゆっくりと目を閉じる。
―――――――――
―――――
急にまぶたの向こうが明るくなった。
あれほど体を突き刺していた痛みを、今はもう感じない。それどころか、今まで感じたことのないくらい体が軽いのだ。
弘樹は、恐る恐る目を開けた。
目の前に広がっていたのは、緑あふれる大きな公園。
少し塗料が剥げた滑り台、風に揺られて軋むブランコ。どこか見覚えがある光景だ。
「ここは、俺があいつと……でも、どうしてここに?」
弘樹がそう呟いたとき、上の方から声が聞こえた。
「魂がここを望んだからよ」
驚いて声の方を見上げると、全身真っ黒な少女の姿。弘樹の背後にあるジャングルジムの頂上に座っていた。
少女は恐らく16か17歳程度。長い黒髪を風になびかせ、漆黒の瞳で弘樹を観察している。
彼女の肩には、小さな黒猫。何故か背中に黒い羽根が生えており、その尻尾は3本に分かれていた。
「天に向かえない場合、魂は強く望んだ場所に移動する。例えば、思い出の場所や大切な人の元へ、ね」
淡々と説明をする少女を見て、弘樹はぽかんと口を開けながら固まっていた。
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