キャベツとモルモッティアとステナ・ファオ

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「来た!」 真っ青な空の天辺には双子の太陽。 灼熱の砂漠のど真ん中、小さなオアシスの岩陰でしゃがんだマウ・ポーの広いオデコには、玉の様な汗。 「あの連絡船を堕とせば、沢山のキャベツが手に入る。沢山のキャベツが手に入れば、キャンプの爺さんも婆さんも、腹いっぱいになれる!」 「ねぇマウ。さっきの乾電池で、連絡船の高度まで行けるのかなぁ~。運良く飛べたとして、モルモッティアに撃墜されるのが、関の山じゃないの?」 岩陰。 マウ・ポーの革靴の前で砂遊びをしている子供はトッテ・ビー。 トッテの小さな手のひらから零れる砂が作る、小さな砂の山の前を、フンコロガシがカラカラと通る。 青い空には、連絡船が燃やして捨てた、白くて太い火薬雲が伸びる。 「トッテ、お前はまだまだ若い。為せば成る、為さねばならないのさ」 茶色のシャツ、茶色のズボンのマウ・ポーはジャンプした。 全身が、バネでできた様な少年である。クリクリの栗毛、空を映した瞳。 「なんだよ、マウだって大人じゃないじゃん!」 トッテは手のひらの砂を捨て、ジャンプをしないで、慎重に岩場をゴシゴシと降りる。 惑星パーンの正午過ぎ。 パーンの西大陸には、いつもの様に、風は無い。
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