キャベツとモルモッティアとステナ・ファオ

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「そもそもそのドロン(泥人形)は動くのかなぁ?」 トッテは岩場のちょうど真ん中、真横に伸びたヤンバルテの幹に足を掛けて、背負っていた重いリュックサックをおろした。 「製造年3066。ちょうど100年前だぜ、新品同様! それよりトッテ、乾電池をよこしな。急がないと連絡船が逃げちまう」 マウ・ポーは両手でもって気忙しく砂を掻いている。 銅色の塊がある。塊には確かに3066の刻印。 「はい!」 トッテ・ビーの投げた四角い乾電池は、この土地の四足動物ケケテテの赤子ほどの大きさ。 一昨日の夜、東の砂漠でマウと一緒に発掘した逸品である。 乾電池をドサリと受け止めたマウは、刻印の横にある切株形のボタンを、革靴の踵(かかと)で踏んだ。 バーンと音がして、3066の鉄蓋(てつぶた)が開いた。 乾電池はそこにブチ込む。 バタリと鉄蓋を閉める。 マウ・ポーごと砂が盛り上がり、いつの間にかトッテとマウは同じ目線になる。 「イケる、このドロンも乾電池も一級品だ」 マウの伸ばした手を、トッテが掴んだ。 砂から現れたのは、この土地でドロンと呼ばれる人型の機械である。 先の文明があちらこちらの砂に埋めた、忘れ物だ。
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