キャベツとモルモッティアとステナ・ファオ

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連絡船は空飛ぶ多連トレーラーである。 5つの噴射ノズルを放射状に広げた牽引機(けんいんき)が、直列する円柱形の貨物コンテナ3つを、勢い良く引っ張っている。 砂漠だらけの西大陸だから、野菜の栽培はまず不可能である。 なので彼等は、ここ何十年もの間、たまたま発掘したドロンに、これもまた、たまたま発掘した乾電池を突っ込んで、連絡船を襲っているのである。 連絡船を飛ばしている者を、砂漠の民はモルモッテアと呼んでいるが、モルモッテアを実際に見たという人はいない。 また、砂漠の民を、この不毛な地に縛りつけているのがモルモッテアであると、砂漠の民の全てが信じているのだが、眉唾である。 それを若い世代に口述で伝える老人たちは皆、ある一定時期以前の記憶を無くしてしまっているから。 ある一定時期とは、これも口伝えの眉唾な伝説であるが、3日3晩、砂漠に吹き荒れた大嵐の前後を指す。 砂漠の大嵐と呼ばれている。 ──「何だコレ、6角形の乾電池なんて聞いた事ないぞ」 マウ・ポーは、そのズシリと重い銀色を脇に抱えると、3066の肩の柵を乗り越え、タラップを掴みながらドロンの背中に回った。 今度は切り株型のボタンを、ブーツの爪先で蹴る。 バフンと煙を吐いて、乾電池ボックスの扉は開く。
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