第1話

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
そもそも、本物と偽者とは何かを話す前に偽者の定義をする必要がある。 ここで言うところの偽者とは、いわゆるバッタものやパチものといったような偽者ということではない。 私自身とまったく同じ存在のものが、同時に現れるということなのだ。 その片割れを今回は偽者ということにした。 一卵性双生児よりも似た、全く見た目がそっくりな存在。 ドッペルゲンガーとでも言えばわかりやすいだろうか。 指紋や声門、NDAまで全く同じ、もうひとつの私。 とにかく、私にそっくりなもうひとつの私が、急に現れたのだ。 それが、私に取って代わってしまったのだ。 私が私であるということの存在を証明するには、公的な身分証明書があればそれで証明することが可能なのだろう。 しかし、もしその身分証明書が何者かに盗まれたとしたら? 私はどうやって、家族や友達、そして、恋人に、私の存在を私であると、認めさせることができるだろうか? そして、最悪なことに、その身分証明書はすべて何者かに拠って盗まれたのである。 私は、私であるということを証明する手段を失ってしまったのである。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!