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対照的であるものの、どちらも瑞穂の心を満たしていた。
「ありがとうございます。ケンさん、リョウさん」
彼氏と過ごす誕生日が続き、こうしてひっそりと迎えたのは久しぶりの瑞穂だが、友達でもないのに祝ってもらえることに幸せを感じ、自然とお礼を口にしていた。
「終電いいのかよ」
リョウの声はバリトンボイスで色気がある。
「もう間に合わない。地下鉄も途中の駅止まりだし」
ドキッとしたのをさとられないように瑞穂は突っ慳貪に返した。
ここは名古屋一の繁華街栄。多数の飲食店がひしめく錦だ。
学生時代から住むワンルームマンションは、地下鉄東山線一本で移動出来るものの終着駅の藤が丘駅にあるため、30分くらい時間がかかる。
終電が出てしまったということは、その距離をタクシーで移動しないとならないわけで、入社二年目の瑞穂にとってはタクシー代も痛いのだが、ケンやリョウに感謝こそすれど、文句一つ無かった。
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