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くたくたになり重くなった体に注ぎ込んだアルコールは程よくて、苛立ちも徐々に落ち着いていく。 「瑞穂ちゃんのこと否定もしないなんて、その男の人は、意気地なしか相当惚れているかどちらかですね」 マスターのケンは、空になったばかりのグラスを下げ、瑞穂が注文する前に新しいグラスをスーッと置いた。 実に出来る男だと瑞穂はいつも感心させられる。 「ミモザですか?」 「うん、そう。瑞穂ちゃん、疲れているのかな。お肌の調子悪そうだから、オレンジのビタミンCが丁度いいかと思ってね」 薄暗い照明の中でもわかる程ひどいのかと、瑞穂は嘆息を漏らした。 「綺麗な瑞穂ちゃんでいて欲しいから」 女性の喜ばせ方の上手いケンの人懐っこい笑顔を前に、瑞穂は、お礼を言ってミモザを口にした。 それから程無くして、小さな店内は、ポツリポツリと来た客で埋まりはじめた。
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