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こうなると瑞穂はカウンターの端により、カクテルを飲みながら持ち歩いている文庫本を読む。
カフェでもないのに読書?薄暗い店内で?
初めは抵抗があったのだが、読書を勧めてくれたのは他でもないケンだ。
初めて来店した瑞穂は、泣き顔を隠そうともせず泣きながらソルティ・ドッグを飲む痛く面倒な客。
そんな瑞穂に、ケンは一冊の本を差し出したのだ。
薄暗いといえど、カウンター席は、照明が当たり読書するには、さして困らない明るさ。
海外の無名作家の本だったが、ケンに促され読むと、瑞穂は落ち着きを取り戻したのだ。
以来、店内が混みケンと会話するのを憚られる時、まだ帰宅したくない気分であれば、こうして読書をさせてもらっている。
いつしか夢中で読んでいた瑞穂だが、お手洗いに行きたくなり席を立った。
時間を確認すれば、もうすぐ終電の時間。
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