6/17
前へ
/107ページ
次へ
あれは―――誕生日についてわざわざ日にちをあげて話していたわけではない。 たまたま自分の生まれた日が“焼酎の日”。ケンに、それなのに焼酎は苦手なのだと、梅雨時に些細な会話をして笑いあっただけのこと。たったそれだけのことを覚えていてくれて、素直に嬉しい。 瑞穂は、綺麗なピンク色のカクテルに目を向けた。 「これ、何ていうカクテル?」 「うーん、瑞穂ちゃんをイメージして作ったオリジナル」 パチッと音がしそうな程、綺麗にウィンクされると、腰掛けた瑞穂は、もう終電のことなど頭になく、口にピンクの液体を流しこんだ。 「美味しい!日本酒ベースですよね?」 「よくわかったね。飲みやすくしてあるから日本酒の香りあまりしないはずだけど」 「カンですよ。焼酎苦手と覚えてくれているなら、本当は洋酒より日本酒が好きだってことも覚えているかなって」
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

379人が本棚に入れています
本棚に追加