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あれは―――誕生日についてわざわざ日にちをあげて話していたわけではない。
たまたま自分の生まれた日が“焼酎の日”。ケンに、それなのに焼酎は苦手なのだと、梅雨時に些細な会話をして笑いあっただけのこと。たったそれだけのことを覚えていてくれて、素直に嬉しい。
瑞穂は、綺麗なピンク色のカクテルに目を向けた。
「これ、何ていうカクテル?」
「うーん、瑞穂ちゃんをイメージして作ったオリジナル」
パチッと音がしそうな程、綺麗にウィンクされると、腰掛けた瑞穂は、もう終電のことなど頭になく、口にピンクの液体を流しこんだ。
「美味しい!日本酒ベースですよね?」
「よくわかったね。飲みやすくしてあるから日本酒の香りあまりしないはずだけど」
「カンですよ。焼酎苦手と覚えてくれているなら、本当は洋酒より日本酒が好きだってことも覚えているかなって」
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