第1話

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私は昔から二重の指輪をしている。 私が問いかけても返答は「風習だから」とだけで終わってしまう。 私の村では外に出るとたいていの人が恐れながら私に挨拶してくる。 人々の視線が気になるが母から「無視して」とだけ言われその場を去っていく。 それが普通だった。 最初は私も「自分のせいか」と思いながらその場を凌いだ。 しかし、ある日。 私が母がいない間に指輪を弄ってみた。 母は指輪を弄るなと言っていたが、そう言われるとどうしても弄りたくなる。 そして母がいない隙をついて指輪を外した。 その指輪は二つで一つの指輪であった。 ちょっと動かすと上の指輪は右に回り下の指輪は左に回った。 しかも指輪の側面には何かの絵柄がついている。 動物かな。 私は夢中になり指輪を360度に回転させた。 気を失ったのか、ある朝私以外は何も残っていなかった。 回りを見るとすべて無くなっている。 これはまだ七歳の時の話であった。
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