第1章の続き

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 順番として、市井は私のことを先に片桐に打診し、その後で私に話を持ってきたということだ。  今まで気が付かなかった事実を知らされ、疑念を感じると共に急激に不安が募った。  週の頭の月曜日。  道路はそれほど混んでおらず、20分と掛からずにマンションの前に着いた。  飛び降りる様にして助手席から降りた私を見て、片桐が頬を動かした。  何がおかしいのだ。  車の背後に回り、片桐の開けたハッチの中に、鈍く光るアタッシュケースが有った。  「部屋はどこだ」  「自分で運びますから」  こんなところを同じ販売所の人間に見られたくはない。  片桐が鼻を鳴らした。  「持ってみろ」  取っ手を掴んで持ち上げると、中でゴトリと音がした。  ズッシリと重いが、私に持てない重さではない。  びっこを引くような恰好で歩き出した私の背後で片桐が言った。  「頼んだぞ」  口調はともかく、片桐の口から聞く初めての頼み事だった。
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