第1章の続き

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 蓮は渋谷に戻らなかった。  自由の無いひたすらしごかれるだけの塀の中に、絶対に戻りたくないと言い、争いや揉め事の起こり得る場所から身を引いたのだった。  板前修行中の身だった蓮は収監と同時に解雇されており、保護司をしている新聞屋の所長に拾われて間真面目に働いた。  この4月には自分で働いて稼いだお金で、免許を取って車も買った。  そして幹部に昇格したと聞き、わたしは我が事のように喜んだ。  渋谷で大勢を率いていた頃よりも、男として頼もしく成長した姿を見て、少年院に入ったことが結果的には良い方に転んだのだと思えた。  二人とも気が強くて短気なので喧嘩はしょっちゅうだが、不思議と別れ話しにはならない。
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