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「違法な物は嫌です」
私はキッパリと言った。
片桐の顔色が変わった。
「ほう。借金を売春で返すのは違法じゃねぇのか」
売春?
違う、愛人契約だ、と言い返したかった。
が、私がそのアタッシュケースを預かることは、既に片桐の中で決定していることなのだろう。
何を言っても無駄なのだと悟り諦めた。
地下の駐車場に止まっていた片桐の車は、予想に反して黒い大きなRV車だった。
ベンツなどのセダンを想像していたのだが、今時のヤクザはこうなのだろうか。
位置の高いシートによじ登るようにして座った。
信号待ちで片桐が口を開いた。
「聞いていた通りの女だ」
聞いていた?
「顔は和風美人。体は小柄で華奢。性格は実直。真っ直ぐ過ぎるところと貧乳なのがたまにきずってな」
褒めてるのかけなしてるのか。
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