第1章の続き

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 10時を回り、一度マンションに戻った。  集金の時期になると、店長は全員が入金に戻るまで事務所に詰めているのだが、待たせてやればいい。  店長は、大学を出て直ぐにその座に着いた所長の息子だ。  配達、拡張、集金、どの苦労も実態も知らずに、はっぱだけをかけてくるのだから、当然専業からは総スカンを食らっている。  今から寝ては朝刊に起きられる自信もない。  まだ2万使い込んでいることもあり、立て替え分だけでも集金してやろうと思った。  ベランダに出てタバコを吸った。  3階の俺の部屋から100メートルくらい離れているだろうか。  10階建てのこちらを向いて建っているマンションに、先月立て替えた客が3人住んでいる。  まだどの部屋の明かりも点いていなかった。  眼下で車の止まる気配がし、何気なくそっちを見やった。  黒いトヨタのランクルだった。
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