第1章の続き

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 ◇  10時を過ぎ、同伴したIT社長だという男を、店の前の六本木通りで見送った。  走りだしたタクシーに向かって腰を折った時、急激に吐き気が襲ってきた。  慌ててビルの隙間に入ったが、何度もこみ上げてくるものの、生唾以外に何も出てはこなかった。  週明けの月曜ということもあり、店内には2組の客しか残っていなかった。  母親でもあるママの雅文に断り、24時間営業のドラッグストアに走った。  妊娠検査薬――。  棒状の試験薬に尿を掛けると、中央部分に数字の1のような線が現れると、箱の説明に書いてある。  2本入りの物が千円札で買えた。  店のトイレで尿を掛けると同時に線が現れた。  普段、遅れても2、3日程度の生理が、既に2週間来ていないのだから、まず間違いないとは思っていたが。
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