第1章の続き

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 一般的な社会では横領と言われても仕方ないことなのだが、新聞配達業界では、その穴埋めさえ出来れば誰にも咎められることはない。  但し、集金には日にちごとに達成率のノルマが設定されており、それがクリア出来ない者は集金手当の額が減ってゆく。  更に月明けの5日にはノルマ95%の達成日が有り、それをクリアした者が給料を手にすることが出来る仕組みになっている。  使い込みの額が大きければ当然達成出来ないノルマであり、給料で精算したくてもそれは叶わない。  販売所側が、使い込みに歯止めを掛ける為に考えた苦肉の策なのだろう。  無事に給料を貰うことの出来た仲間を当てにして使い込みの補填をし、何とか受け取った給料はその仲間へ返して瞬時に消える。  そういった悪循環にハマり込んでいる筆頭者が坂井を始めとする不良専業なのだ。  その額こそ小さいが、今月は俺も人のことが言えた状況ではなく、27日の今日の段階で数万の使い込みをしているはずだった。
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